宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

ホーソン工場の4つの実験と人間関係論

 ホーソン工場実験は科学的管理法の実証実験として始まりました。1924年から始まりますが、最初に「照明実験」が行われ、「リレー(継電器)組み立て実験」「面接実験」「バンク配線作業実験」と全部で大きく4つ(正確には6つ)行われています。

 「照明実験」は工場内の明るさと作業能率の関係を調査する目的で始まりました。実験は対照実験で行われました。仮説は「証明が明るいと作業能率が上がる」というものです。それを証明するために、照明を暗くするとどの程度コイル巻きの作業速度が低下するかを計りました。常に明るい照明で作業を行うグループに対して、最初は明るく、実験回数を追うごとに照明を暗くしていく統制グループの作業効率を比較するという対照実験です。

 結果は案に反して、照明の明るさ・暗さという作業環境と作業能率がリンクしませんでした。常に100ワットで作業するグループの生産速度109に対し、25ワットとかなり暗い照明での生産速度が114というように。統制グループを100ワットに戻すと生産速度は116で、その時常に100ワットグループの生産速度は114でした。

 これは確かに解釈に苦しむ結果です。物理的条件が生産性を左右するという仮説が否定され、メイヨーやレスリスバーガーたちをハーバード大学から招聘して、次の実験からはハーバード大学が中心になって実験が継続されて行きました。

 「リレー組み立て実験」は、1927年4月から1929年6月までの期間に行われました。組み立て作業員5人と部品を揃えて渡す世話役1人の6人の女性従業員でグループが組まれました。賃金・休憩時間・部屋の温度などの労働条件を変えながら、リレー(継電器)の組み立てを行って、作業能率と労働条件の関係を計測するものでした。ここでも作業時間や休憩時間が直接に作業能率に影響しないことが確認されました。この補足的実験として、賃金制度の変更や割り増し賃金の支給が作業能率にどのように影響するかも実験されました。確かに作業能率を引き上げる効果はありましたが、ただし、その効果が一時的であることも判明。

 メイヨーたちは、作業能率の向上には、むしろ、次のような心理的なものが影響したのではないかと分析しています。①女性従業員は特別に選ばれたことを誇りに思っていた。②共通の友人がいて、仲間意識が高かった。③実験の目的を最初から知っていた。④国内トップクラスの大学であるハーバード大学の実験である。

 「面接実験」は1928年9月から1930年3月までの期間に、工場全体の8部門の従業員20000人以上に実施されました。これは自由に意見を話してもらう形式で実施されました。結果として、作業条件などの話は出てこなくて、個人的感情や企業内のインフォーマル組織(非公式集団)の影響の大きさが、見て取れるテストになりました。

 「バンク配線作業実験」は1931年11月から1932年5月まで行われています。「配線工」「ハンダ付け工」「検査工」の関係性の深い三グループの配線作業の様子を観察する実験です。観察者はただ観察するのみです。この実験を通して、仮説の通り自然発生的なインフォーマル組織が確認され、それが作業能率をコントロールしていることが明らかになりました。

 以上の8年にわたる実験から、メイヨーとレスリスバーガーによって人間関係論の嚆矢となる二つの仮説が出されています。

仮説1.生産能率に多きな影響を与えるのは精神的態度の変化である。

仮説2.非公式集団の存在が生産能率に大きな影響を与えている。

 もちろんこのメイヨーとレスリスバーガーのホーソン実験とそこから生まれた人間関係論に関しては批判があります。時代的な要因や作業の学習効果という観点からの批判です。しかし、ホーソン工場実験と人間関係論の登場が、その後の経営学における考え方を大きく変えたことは事実です。

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