宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

リーダーシップ 3)状況を組み込む➁SL理論

 SL(シチュエーショナル・リーダーシップ)理論とは、チームの状況によってリーダーは行動を変えた方が効果的であるというフィードラーの条件即応理論に対し、リーダーのLPC値が明確でない場合に、メンバーの成熟度によってリーダーの行動を変えるという考え方です。メンバーの能力や熱意に焦点を当てています。1960年代末から1970年代にかけて、ハーシーとブランチャードによって、提唱されました。

 この理論は1960年代のオハイオ州立大学で行われた研究から始まっています。アメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグ(1923-2000)のモチベーションの二要因論と、フィードラーの適合理論の二つを説明するために作られたと言われます。

 二要因論というのは、仕事のモチベーションを決めるのは、衛生要因と動機付け要因の二つに分けて考えるべきというものです。衛生要因とは、給与や健康、対人関係、労働条件、上司の管理方式、私生活などで、仕事を続ける上での基本条件です。私生活要因というのは、出産・育児・介護などで離職する場合を指しています。これは、マズローの欲求5段階説で言う「生理的欲求」、「安全・安定欲求」、「社会的欲求」(所属と愛の欲求)の一部に該当します。

 動機付け要因とは、仕事そのものから来る「満足度」の要因です。目標達成、上司・同僚からの承認、仕事そのもの、責任、昇進、成長などのやりがいに結びつくものです。これはマズローの欲求5段階説で言う「社会的欲求」のより高次の部分、「承認(自尊)欲求」、「自己実現欲求」に当たります。

 SL理論では、組織・部下の成熟度に合わせて、指示的行動と支援的行動の割合いを変えていくという考え方を取ります。能力は低くても(学ぼうという)意欲が高いときは、指示型を取ります。仕事への習熟度が上がって、ただ意欲が今一つの状態では、説得的(指示と支援の両方とも高い)スタイルを取ります。仕事的には有能さを示しますが、自信や責任を負う意思が未成熟な段階では、指示行動を低くして支援を高くするサポート型・参加型のスタイルを取ります。仕事に習熟し、責任を負うことにも喜びを感じる段階では、指示や支援はそれほど必要ではありません。委任型のリーダーシップ・スタイルが望ましいとされます。

 SL理論はまだ、研究途上のようですが、実用的なため人事担当者などに広く受け入れられているようです。ただ、部下の能力や仕事への熱意によってリーダーシップ・スタイルを変えることで、不公平感を生む危険性があると言われます。意思疎通が十分になされている必要があります。

 その他にも、リーダーシップ交換・交流理論(1970年代~)、変革型リーダーシップ理論(1980年代~)、倫理型リーダーシップ理論(1980年代~)、さらにサーバント・リーダーシップ(互恵的リーダーシップ)と、リーダーシップ研究は変化を続けているようです。

パブロ・ピカソ『男と女』(2022年11月24日撮影)。不思議な絵。でも色合いと構図に惹きつけられます。

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