宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

リーダーシップ 1)特性と行動から

 朝晩はすっかり冷えるようになりました。でも昼間、日差しがあるとまだ、半袖の人が見られます。この時期の洋服選びは悩ましい。自分のものならまだしも、お年寄りの場合、暑さ寒さの感度が鈍っていることと、個人差があるので、より寒さを感じる人と暑さを感じる人で、かなりの落差があります。

 社会心理学の授業の準備を始めましたが、リーダーシップについて考えています。まず、指導者というのはどういう存在なのでしょうか。WBCの栗山監督は色々なところで取り上げられています。日大アメフト部の大麻問題で、また日大は叩かれています。ジャニーズ事務所は、故ジャニー喜田川氏の性加害問題で揺れています。

 リーダーシップを考える観点は、リーダーの特性とリーダーの行動です。まず、研究はリーダーに必要な特性という観点から考えられました。しかし、これら普通の人より優れた資質(知能・自信・支配性・社交性・活動性・社会活動への参加・学業成績・責任感)に着目した研究は、思うような成果をあげられませんでした。確かに、これらの資質はリーダーとして必要ですが、リーダーでなくてもフォロアーにもある資質だということです。

 そこでリーダーの行動の仕方に焦点が移行します。つまりリーダーシップ・スタイルに焦点が移動しました。民主型、専制型、放任型という三つのリーダーシップ・スタイルを実験的に明確に定義して、各リーダーがそれに沿って行動した場合、集団のメンバーの行動や集団の成果にどのような違いを与えるかが実験されました。これがクルト・レヴィン(1890-1947)が、少年たちを対象にアイオワ大学で行った「アイオワ研究」です。

 民主型は、集団の方針はメンバーの話し合いで決定し、リーダーは求められた場合のみ指示を出します。専制型は、リーダーがすべてを決定して指示出しをします。放任型は、すべてをメンバーに任せます。その結果、集団の生産性は、民主型と専制型でよく、放任型では下がりました。仕事の質は、民主型が最もよく、集団の雰囲気も良かった。専制型では、いじめが多く発生しました。メンバーの好意度は民主型が最も高く、次いで放任型でした。まぁ、経験的にも分かります。

 日本の社会心理学者三隅二不二(みすみじゅう)(1924-2002)さんは日本の小学生対象に「アイオワ研究」を実証実験しています。結果、アメリカと大差なかったそうです。三角さんは、リーダーシップ・スタイルをこの3つに分類するやり方から、さらに展開しました。

 1960年代に提示されたリーダーの行動に関するPM理論は、集団の二つの機能との連関で考えられました。三隅さんは、15万人以上の調査をもとに、PM理論を提示しました。PはPerformance行動、課題達成機能の頭文字です。MはMaintenance行動、集団維持機能です。そして、リーダーシップスタイルをメンバーが評価し、4通りの組み合わせが出されました。PM型、M型、P型、pm型です。

 この4通りを作業量とメンバーの満足度で評価すると、やはりPM型が一番望ましく、pm型が最も劣っていました。作業量では、PM>P>M>pmでした。メンバー満足度はPM>M>P>pmの順になりました。ただ、これは、あくまでも傾向性と捉えておいた方が良いようです。

 1974年に256名を対象に行われた、地方銀行の業績の良い8支店と業績の悪い8支店を比較した研究では、業績の良い支店の管理職と支店長の中にもpm型が居ました。もちろん業績の悪い支店より少ない数でしたが。そして、業績の悪い支店にもPM型のリーダー・シップスタイルは存在しました。PM理論は100パーセントの効果あるリーダーシップ・スタイルだと言っているわけではないということです。人間対象の行動にパーフェクトはない、というのは当たり前ではあります。

 最近の研究では、リーダーシップを発揮する条件に、状況を加えて分析が行われています。「条件即応理論」と「条件対応理論(SL理論)」です。これは日を改めて書きます。

       2018年10月23日制作。ピンクッションが印象的。原産地は南アフリカ

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