宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

リーダーシップ 2)状況を組み込む➀フィードラーのコンティンジェンシー理論

 リーダーシップがリーダーの特性から、行動(スタイル)へと視点を移動したということを、以前(17日)書きました。そして次に、リーダーシップを発揮する条件に、状況を加える分析が行われるようになったことも書きました。コンティンジェンシー(偶発性)理論と言われます。フィードラーの「条件即応理論」とSL理論(「条件対応理論」)、パス・ゴール理論などがあります。

 PM理論(リーダーの行動に着目)はリーダーシップ理論としては有名ですが、業績との関係は必ずしも決定的なものとしては、定義できませんでした。業績の悪い支店にもPM型リーダーは存在しました。業績の良い支店よりは明らかに少数ではありましたが。リーダーシップをリーダー側からのみ研究するのでなく、状況からの要請とリーダーの人となりとの関係の中で探ったのが条件即応理論(フィードラーのコンティンジェンシー理論)です。この理論は、アメリカの研究者F・E・フィードラー(1922-2017)によって、1960年代に提起されました。

 フレッド・E.・フィードラーによって、リーダーシップ研究はそれ以前とそれ以後に分けられる、と言われます。彼は、オーストリアのウィーンで生まれました。ユダヤ人だったことから、1938年3月、ヒトラーオーストリアを併合すると、故国を捨てることになりました。『サウンド・オブ・ミュージック』を思い出します。彼は、上海に向かう両親と別れ、単身遠い親せきを頼って渡米しました。時代を考えても、15歳で単身アメリカへ移住することを決断・実行する、というのはなかなか凄いことです。

 条件即応理論は、LPCをもとに、状況との関連の中でリーダーシップを考えます。LPCというのは、Least Preferred Coworkerの頭文字を取っています。「一緒に仕事をするとき最も苦手な仲間」の意味です。このテストは、リーダー自身の対人関係の傾向を測定するものです。一番苦手だと思う人を一人思い浮かべて、その人をどのように評価するかを点数化します。LPC値が高い人は、最も苦手な仕事仲間でも好意的に評価する人です。「人間関係志向」の人です。これに対し、LPC値の低い人は「課題達成志向」の人です。

 リーダーの行動が分かったら、どういう状況でそれぞれが効果的なリーダーシップを発揮できるかを分析します。状況は、3つの条件で分類します。⓵リーダー成員関係、➁課題構造度(リーダーが直面している課題や、部下の職務が明確にされている度合い)、③リーダーの地位力(報酬力や人事権)。3つの条件の組み合わせから、リーダーの状況統制力を「高統制(好ましい)」、「中統制(中程度)」、「低統制(好ましくない)」に分けします。

 リーダーシップの効果は、状況によって異なることが分かって来て、高統制と低統制では、低LPCが高い業績を上げます。これに対して中統制で業績を上げるのが、高LPCです。この関係性に関して、フィードラーはブラックボックスと言っていたようです。その後、仕事のストレスが、状況統制力とリーダーのLPCによって規定され、かつ、フィードラーの条件即応モデルを裏返したパターンになることが見出されています(1985年)。例えば、状況統制力が中統制のとき、低LPCの仕事ストレスはマックスになります。条件即応モデルでは、中統制で、低LPCは業績が上がりませんでした。

                  2018年11月27日制作

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