宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

ノンバーバル・コミュニケーション

 人間関係のシャドウ・ワークを書きながら、総合的に捉える訓練でしていたことは何かと考えました。それは、人間関係に関して言えば、セミバーバル・コミュニケーションやノンバーバル・コミュニケーションの訓練ではなかったか。セミバーバル・コミュニケーションとは、言葉の抑揚や強弱、長短などの語調でメッセージが伝わるコミュニケーションであり、ノンバーバル・コミュニケーションは、表情や動作や間合いのような非言語的要素でメッセージが伝わるコミュニケーションです。言葉そのものがコミュニケーションに果たす割合は、多くても4割程度、人によっては1割くらいと見積もります。人間がほかの動物と違う部分はどこにあるかといえば、それは人間が言葉を持ったことだと言われますから、そこから考えると、ちょっと意外な感があります。

 しかし言葉というものは、言葉を聴き取ろうと耳を澄ますとき、音の羅列でなく、音の表情が聴こえてきます。それを語る人の、心のあり様が聴こえてくると言ったらいいでしょうか。その人の体型や年齢・性別も現れてきます。ここに視覚情報が付け加われば、さらにいろいろな情報が伝わります。日常生活における言葉の受け取り方は、その意味でハイ・コンテクスト(言葉以外の含みが大きい)形であり、日本では特に「沈黙は金」のハイ・コンテクスト形が目指されていたということでしょう。

 認知症状を持つ利用者さんたちとコミュニケーションをとろうとするとき、表情や言葉の調子がとても重要だと言われます。それと身体への触れ方。言葉そのものでないところでのコミュニケーションの大きさは、実際に利用者さんたちと過ごしているとよく分かります。こちらの思いが伝わっているという実感、利用者さんの思いが伝わって来ているという実感、それらは確かに言葉を通さないことの方が多いなあ、と感じます。観ること、聴くこと、触れること、それらを総合的に使いながら状況を把握し、そこで発せられる言葉が始めて力を発揮する、ということでしょう。

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