次の世代に幸あれと願うのは、大人世代にはごく当たり前の感覚だと思います。では大人世代は次の世代のために何ができるのでしょうか。今を少しでもより良くしたい、後に禍根を残さない、自分たちの受け継いできた良いものを手渡したい等々。
ママの会のメンバーが安保関連法案に反対するデモに参加するとき、合言葉は「だれの子どもも殺させない」です。殺し合いはその後にもずっと禍根を残します。安倍首相の「戦後70年の談話」を読んだとき、首相が「私たちの子や孫に、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」という表現で思い出したことがあります。
3、4年前のことだったと思いますが、大河ドラマ「八重の桜」の話になったとき、故片山洋之介先生から、こんな話を伺いました。知り合いの山口の旅館の女将さんから聞いたそうです。山口の旅館の女将さん組合から会津のおかみさん組合へ「もうそろそろ何か一緒にやりませんか」という提案をしたら、「まだ早い」と断られたと。
人間は歴史的存在です。ヴァイツゼッカー大統領の演説「荒れ野の40年」(1985年)の中に有名な一文があります。「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります」。
残酷さの連鎖を作ってはならないと思います。そのためには、「だれの子どもも殺させ」てはいけないし、「このまま謝罪を続けさせたくない」ではなく「謝罪を続ける状態を二度と作ってはならない」ということだと思います。
宮内ひさこ