宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

社会的ジレンマ

 昨日と打って変わって曇りがちの一日でした。11月は寒くなっていく季節ですが、銀杏などが色づいて晴れていると気持ちのよい一日が過ごせます。しかし今日の曇りは、冬の訪れの先触れみたいで、寒々しさを感じさせられました。

 さて、多くの人を含む相互依存関係の問題は、共有地の悲劇を考えると分かり易いですが、地球温暖化問題はまさにこの問題と言えます。これは限定的交換の互恵的な利他主義が双方に得という分かり易さがない、一般交換の問題です。一般交換とは自分が利益を与える相手と、自分に利益を与える相手が必ずしも一致しない状況です。問題は、直接見返りが期待できない場合の親切を可能にするものは何か、ということです。このような状況は間接互恵性命名されています。

 この多くの人を含む相互依存関係を、ロビン・ドウズという人が社会的ジレンマとして定義しています。①各個人は、その状況で協力か非協力を選ぶことができる。②各個人にとっては、非協力を選ぶ方が有利な結果を得られる。③しかし全員が非協力を選んだ場合の結果は、全員が協力を選んだ場合の結果よりも悪い。(亀田、村田『複雑さに挑む社会心理学有斐閣アルマより要約

 さらにこの状況では、非協力者を罰しよう自分が非協力に転じる(応報戦略)と、ほかの善良な協力者にも影響が出てしまいます。ピンポイントで自分の非協力で相手を攻撃できない。さらに、自分が返り討ちに合うリスクや誰かに罰を与えることを依頼するなら、そのコストがかかります。ここでは2次的ジレンマが生じています。

 最初のジレンマは、社会的ジレンマ状況で協力するか非協力かです。2次のジレンマとは、非協力者を罰するか罰しないかです。

 この問題に解決法はあるのか。囚人のジレンマのような解決策(応報戦略)は出されていません。しかし、解決に向けてのいくつかの方向性は出ているようです。

 1つ目は、利得構造を変えることです。協力すると単純に損をするのでなく、見返りがあるようにする。例えば、資源ごみの回収にポイントを付けることなど。2つ目は、はじめの協力率を上げておくと、協力率が限界質量を超えやすいということです。

 限界質量というのは、もともとは物理学の用語です。ある種の質量が一定の量を超えると質的変化をするときのそのギリギリの量のことです。臨界値とか閾値とも言われます。ある社会現象の拡大・収束の分かれ目を限界質量と言います。例えば、流行現象は刺激に対して実際に行動する人の割合が、この限界質量を超えると生じます。

 反応者比率の理論値は直線になりますが、累積割合で表される実測値はこの直線と交わって超えて行きます。この交わったところが、臨界値です。自他の行動はお互いに影響関係にあると同時に、ある一定量が社会現象の拡大・収束に関わっているという考え方です。

 3つ目は、他のメンバーへの信頼感を高める。4つ目が利己主義的利他主義を身に付ける。これは、協力しないことが自分の得にならないことの経験から来ます。協力しないと結局問題が解決しないような状況(相互依存性)の経験から、利己主義的利他主義が発揮されます。5つ目はコミュニケーションをとること(大橋恵編著『集団心理学』サイエンス社より要約)。

 相互依存性の認識は、ただ頭で理解しただけでは不十分なのでしょう。実際に、シェリフのサマーキャンプ実験のようなもので共同問題解決を経験することで、相互依存性の認識から集団間協力が可能になるようです。  

 2024年11月4日 Hiたっち仲良しまつり(しおかぜみなとグラウンド) 

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