宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

水戸芸術館で生まれているもの

 11日に水戸芸術館で、「300人の≪第九≫出演者によるミニ・コンサート2022」がありました。指揮者の打越孝裕さんがMC(Master of Ceremony 式の采配者)を務め、ソプラノ結城滋子さん、メゾソプラノ山本彩子さん、テノール倉石真さん、バリトン清水良一さんの歌唱と、エレクトーン小林由佳さん、ピアノ中村真由美さん・中村佳代さん、パーカッション山地章子さんのそれぞれの演奏と、歌唱伴奏を楽しみました。

 1月にはまぎくカフェで歌って下さる山本彩子さんが出演していたので、カフェのスタッフで聴きに行ってきました。来年こそは300人の≪第九≫を実現させたいという打越さんの言葉に、大きな拍手が沸き起こりました。コンサートもコンパクトですが、身近な感じがあって、内容も充実していました。

 その後、同じ芸術館(1990年開館)で開催していた、現代美術(「中崎透 フィクション・トラベラー」)を鑑賞してきました。現代美術はどうも分かり難いのですが、水戸を素材にした美術展でした。佐川一信さんの造った水戸芸術館が、世代を超えて影響を与えていること、恐らくこれからも影響を与え続けるだろうことを実感させられました。

 「最新作≪フィクション・トラベラー≫は、水戸市界隈に生まれ育ち今もこの地に住む、30代から70代までの男女5名に行ったインタビューをもとに制作されました」と案内に書かれていました。本人(1976年生まれ)が、高校時代に、水戸芸の芝生で授業をさぼっていると、通りかかった水戸芸の現代美術センターのスタッフが声を掛けてくれて、話を聞いてくれた、というエピソードもありました。それぞれの「言葉」から、作品のモチーフや背景にあるものが見えて来て、面白かったです。街の中に、自分の好きな場所があることの大切さ。

 そして、この「言葉」の紡ぐもの、繋ぐものは、ミニ・コンサートの歌唱(内容は分かりませんでしたが)からも伝わってくる感じがしました。私たちは、日常生活では、言葉を実用的なものとして使っています。でも、その実用的な意図で使う言葉が、その同じ表現が、実用性を離れても生きて、色々なものを伝えます。

 中崎さんのエピソードの語りから、「水戸芸の芝生で授業をさぼった時間」が情景として浮かんできて、佐川一信さんの造ったものの思わぬ波及に、感慨深いものがありました。

         2022年12月11日、水戸芸術館現代美術ギャラリーにて

h-miya@concerto.plala.or.jp