宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

エビデンスレベルとバイアス

 今日は少しホッとする気温でした。お天気も良かったし、やれやれです。しかし、今日に日付が変わる頃、津波警報が発令されていました。起きてビックリでした。トンガで15日に起きた火山噴火の影響です。

 さて、このところ引っかかってきたエビデンスという言葉は、日本語にすると「証拠・根拠」になります。ただ、根拠という言葉は、何かに関して自分の意見を述べるときの理由づけです。しかし、エビデンスを持つ情報とは、科学的根拠を持った、バイアスの少ない信頼できる情報という意味があります。「根拠」と区別するために「エビデンス」とカタカナで表現することが多くなってきています。

 人が意見を述べるとき、「なぜなら~」が提示されます。この「なぜなら~」が意見の根拠です。ただこの根拠は、間違っている場合もあれば、弱いものもあります。個人的経験や感想が根拠になっている場合、バイアスがかかっている可能性が高い。

 バイアスには認知バイアス、感情バイアス、正常性バイアス、生存者バイアスがあります。認知バイアスに全部ひっくるめて考えることも出来ます。要は合理性や客観性の境界に関わると言えます。

 上の4つに分けたときの認知バイアスとは、記憶の誤りや基本的な統計学的な誤り、根本的帰属の誤りがあります。統計学的な誤りについて、例えば、私たちは飛行機と自動車どちらが危険かと言われると、飛行機と思わず答える傾向がないでしょうか。でも、飛行機事故の死亡確率は0.0009%、自動車事故の死亡確率は0.003%(2017年)です。アメリカではさらに飛行機事故の確率は低く、0.000034%のようです。また、日本では1986年以降、飛行機事故は起こっていません。

 根本的帰属の誤りとは、問題の原因を状況ではなく個人の性質などに見い出しがちな傾向です。誰かがものを壊すミスをしたとき、急いでいたからとか、置いてある場所が悪かったと捉えるより、そそっかしいからというように、個人に帰属させる傾向のことです。

 認知を包括的概念枠で捉えると、認知バイアスには、後知恵バイアス、確証バイアス(自分に都合のいい情報だけ集める)、正常性バイアス(被害が予想される状況でも「自分は大丈夫」思い込む)、生存者バイアス(生還しなかった人の意見は聞けない)、アンカリング(評価が無自覚的に何かの情報に引きずられること)を含めることが出来ます。感情バイアスも、感情的要因に認知が引きずられるという点では、認知バイアスに入るとも言えます。

 これらのバイアスを極力排するのが、エビデンスレベルが高いと言われる状態です。バイアスが生じるのは、事実誤認から来るといえますが、バイアスを排除するためにはどうすればいいか。客観的観察や数値による記述を重視する、ランダムに取ったサンプル同士の比較検討、さらにそれらのデータ同士の分析ということが考えられます。

 EBMでは、臨床結果が重視され、ランダム化比較試験(RCT)、そのメタ分析によって信頼性が担保されます。ランダム化比較試験とは、次のようなポイントを持ちます。治療群と対照群があること、それらはランダムに抽出されていること、盲検化(検査者と被験者どちらも治療群と対照群がどちらか分からない。計測に主観が入らないようにする)がされていること。そして、RCTを複数集め解析するのが、メタアナリシスです。

 伝言ゲームをやると微妙に話が違っていきます。情報に関しても、バイアスを出来るだけ排除して、エビデンスレベルを上げる手順は、色々な社会的場面で発展途上かなと思います。

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               サザにて

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