宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

オミクロン株と相互依存状況

 人間は群れて生活しています。そこでは相互依存関係にある、と言えます。通常相互依存というと、協力関係を意味しますが、社会心理学ではプラスとマイナスの両方に使います。貴重な食物や資源を他人や他のグループと取り合うような場合でも、マイナスの相互依存関係が存在すると言います。何のために相互依存関係を考えるのか、という問いが学生から出ました。

 新型コロナウィルスのオミクロン株流行が、今問題になっていますが、日本を含めイギリスや欧州連合各国は、アフリカ南部からの入国制限を強化しています。南アのラマポーザ大統領は、「南アフリカや周辺国への不当な差別だ」(28日)と国内向けに演説したそうです。WHO(世界保健機関)も「オミクロン株は現在、世界の複数地域で確認されており、アフリカをターゲットにした渡航禁止措置は国際的連帯に反する」(28日)と声明を発表しました。南アのワクチン接種率は24%(28日現在)と、先進諸国に比べると明らかに遅れています。このアフリカ諸国でのワクチン接種率の遅れの問題は、以前から指摘されてきました。にもかかわらず、先進諸国は自国の状態に対応することを優先せざるを得ず、その結果がウィルスの変異に温床を作り出してしまったのか。まさに、相互依存のジレンマ状況が、新型コロナ感染において問われています。

 社会的ジレンマ問題を考えるとき、囚人のジレンマがまず引き合いに出されます。各人は自分の得を考えるなら非協力が有利です。でも集団としては協力が得なのです。二人とか顔の見える関係におけるジレンマ問題は、応報戦略(しっぺ返し戦略)が最も得になる、という結果がコンピュータシミュレーションで分かっています。最初は協力から始め、次からは、相手の出方で非協力には非協力で応じ、協力には協力で応じます。この即座にやり返すことがポイントです。私たちが普通にやっていることが、証明されたわけです。

 しかし匿名性を含むもっと規模の大きなジレンマ状況は、どうやって解決したらいいのか、まだ定説は出ていません。それでも現実に私たちは、何とか折り合いを付けようと努力しています。

 自国を守るための水際戦略には賛成ですが、それと並行して、ワクチン接種の遅れている国々の接種率を加速することに協力しないと、世界全体が巻き込まれることを、オミクロン株が突き付けています。地球温暖化問題もマイナスの相互依存状況の例です。社会の相互依存関係は、ネットでの匿名の誹謗中傷問題も含め、世界規模になっています。

 生き残りのための集団化がもたらしたマイナスの相互依存関係の仕組みを理解することは、問題解決の難しさを納得し、それに向き合おうとするシステムの開発の重要を得心することに繋がります。「誰かがやってくれるよ」ではなく、自分たちの問題でもあることが心底分かれば、リーダーを選ぶときにも、役立てようとします。自分たちにできる手段を探そうという気持ちが出てきます。

 学生の疑問への、今のところの私の回答です。

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11月26日、池坊の生花新風体で活けた花(トルコ桔梗が「用」、ヒペリカム紅葉が「主」、コボリ柳「あしらい」)。お生花(しょうか)の基本、足元を揃えること以外は、自由に発想。

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