宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

シュタイナー教育と療育

 発達障害への療育を考えるとき、ヨーロッパにおける治癒教育を思い出します。19世紀には、この言葉は存在していたと言われます。治癒教育という言葉は、ルドルフ・シュタイナー(1861~1925)が創設したシュタイナー教育(ヴァルドルフ教育)を思い出させます。シュタイナーは障害児教育を「教育の中の教育」と呼んでいました。ヴァルドルフ・シューレは、1919年にドイツ南部シュトゥットガルトに初めて開かれました。この学校は工場労働者の子弟を教育することを目的に、依頼されたものです。タバコ工場の共同経営者モルトはシュタイナーの人智学に共鳴していて、彼に開校を依頼したのです。この時、シュタイナーは以下の4つを条件に出して、引き受けています。

①学校はあらゆる子どもたちに開かれていること。②男女共学であること。③12年の一貫教育であること。④教師たちが学校経営の中心的役割を担い、行政や財界からの影響は最小限に抑えること。

 シュタイナー教育は一言で言えば「自由へ向けての教育」と言われます。「自由な」教育ではなく、子どもたちが人間としての「自由を獲得できるよう」育成する教育です。彼は生まれてから成人までの時期を、七年毎に3つに区切って、それぞれの課題があると言います。第1七年期、いわゆる就学前の時期の課題は、すべての感覚を調和的に発達させるための感覚教育の徹底です。ここでは芸術的体験が特に重視されています。芸術的要素は小学校へ上がってからも特に最初の七年は重視されますが、徐々に知的部分への働き掛けを強めていきます。

 人間は生まれてすぐは右脳で判断し直感で行動すると言われます。3歳くらいから、左脳が発達して論理的思考ができるようになります。発達障害の子どもは、右脳が発達していると言われています。特に、自閉スペクトラム症の人に視覚優位が多いとも言われています。彼らは目からの情報に敏感で、耳からの情報で物事を理解するのが苦手ということです。視覚による情報吸収が得意な子どもには、視覚から新しい情報をインプットすることが効果的と言われます。RIKUIメゾットの研修会でフラッシュカードの意味を理解しましたが、感覚をどう調和的に発達させていくのか、発達障害の療育の課題の一つだと思います。シュタイナー教育では、むしろ聴覚を発達させる働きかけを重視するだろうと考えます。

 また、前頭前野は「やる気、思考力、集中力」に関係しています。ワーキングメモリ(短期記憶)もここに属しています。ブロードマン脳地図の8野と46野と言われています。例えば、短期記憶のカード課題は、このワーキングメモリーを鍛えるためのものです。発達障害の子どもたちが困難を抱えるといわれる場所のようですが、加齢とともに困難を抱えて行く場所でもあります。このカード課題は、軽度認知症や加齢における記憶の衰えに対処する訓練方法でもあると言えるのかもしれません。

 RIKUIメゾットの研修を受けて、何のための「遊び」か、が理屈付けられていることで、発達を評価する視点があることを具体的に分かりました。ビジョントレーニングの基礎訓練が文字を書いていくときや教科書を読むときの基礎訓練になること。空間認知、論理的思考などを知育具で楽しんで鍛えること等も、なるほどと思いました。

 発達障害の療育は、一般の教育手法としても有効なものだと考えています。

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          佐川文庫の庭の椅子。感覚に心地よく訴えてきます。

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