宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

枝画の鑑賞方法

 水曜日(16日)のはまぎくカフェは、「枝画の楽しみ方」でした。枝画とは、絵の輪郭線に「木の枝」を使って、それを平板上に「漆喰」で固定します。そののち、枝で構成された輪郭線の中を絵の具で彩色した作品です。

 枝画の創始者柴沼清さんが、現物を8つ持ってきてくれ、パワーポイントを使って解説してくれました。枝画の鑑賞は、受け身で作品を味わうだけではないことを教えてくれました。

 一番対象を客観的に捉えるところから見ることを、メルロ=ポンティは「最適性」と言いました。その時実現しているのが特権的知覚であり、その定点が「成熟点」と言われます。対象までの距離、対象の向き、対象の現われの三つの規範を同時に満足させるような成熟点があって、知覚の全過程はこの点に向おうとする、と言われます。通常の絵画にはこのような「成熟点」が一つあります。

 枝画では照明の位置によって、あるいは朝・昼・晩の光の状態、晴れ、曇り、雨などの天候によって、作品の表情が大きく変化します。見る角度によっても見える「影」と隠れた「陰」が微妙に交差することで、作品の表情が変わります。同じ作品なのに、微笑んでいるように見えることもあれば、悲しみを表現しているようにも見えるのです。

 枝画の「成熟点」は一つではないのです。これはかなり革新的な鑑賞方法を切り拓いている画法と言えるのではないでしょうか。

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