宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

現実と個人の理想との軋轢の中で生じる「問い」

 晴れていますが、今日は寒いです。昨日も午前中は曇っていて寒かったですが、午後になって陽が差してきて、少し暖かくなりました。夕方からはまた冷え込んできて、今日は寒いです。窓越しに見る景色は、陽が差していて暖かそうですが、ちょっと外に出ると途端に寒くて震えが来ます。明日からは日中は気温が上がるというので、やれやれです。『早春賦』の出だし、「春は名のみの 風の寒さや」は、今の季節を的確に表現しています。

 歌の力というか音楽の力は、私たちの日常生活と結びついています。ネットサーフィンをしていたら、陸上自衛隊の歌姫鶫真衣さんの演奏を映すYouTube動画に行きつきました。そこから、海上自衛隊の歌姫三宅由佳莉さんの歌声に聞き惚れました。彼女の歌う秋桜には思わず感情移入してしまいました。歌い出しのピアノシモでもはっきりと聞き取れる歌詞、それが盛り上がる後半。上手いなぁ。

 平成30年の自衛隊音楽祭の入場行進や退場行進の美しさ。能の所作を思わせるような動きでした。自衛隊の音楽隊に入ってくる人たちには、音大卒の人たちが多いようです。鶫さんもプロの声楽家になるための過程を辿っていたようです。それが、三宅さんの歌声を聴いて、自衛隊に入隊したとか。

 自衛隊音楽隊の役割を調べると、Wikipediaには次のように載っていました。

  1. 隊員の士気高揚のための演奏
  2. 儀式のための演奏
  3. 広報のための演奏
  4. 必要に応じ、指揮所の警備

音楽隊を志望する人たちの多くは、音楽が好きで音楽を仕事にしたい人たちなのではないのかと思います。自衛隊という組織の在り様、そこで音楽隊に要求される目標はもちろん教育され、理解していると思いますが、その出発点は「音楽が好き」だと思います。

 組織の目的とそこで仕事をする個々人の思いは必ずしも一致しません。しかし、恐らく組織の持つ風土的なものは、個々人に浸み込んでいきます。それを各人がどう自分の物語りにしていくのか。芸術を志す人たちと、自衛隊という国際法上は軍隊の扱いを受ける組織とは、どうも違和感があります。

 しかし芸術と現実の権力は近いです。宗教と音楽や絵画、彫刻の関係はすぐに思い浮かびます。また芸術を政治的に効果的に使った例としては、ヒトラーが思い浮かびます。芸術には人の心をつかむ力があります。それゆえに、昔から芸術には為政者がパトロンとしてついていました。

 芸術とは何か。それは組織に属したり関わったりして仕事としているアーティストが時に問わざるを得ないものだと思います。「~とは何か」という問いは、芸術に関わるだけでなく、仕事に従事する者なら、どこかで問わざるを得ない問いだと思います。それは個人の思いと組織の論理が完全に一致することなどありえない以上、当然の問いです。これに自分なりにその都度の答えを出しながら、私たちは自分の仕事や社会、自分の生き方の物語りを編み上げていくのかなぁと思います。

 私にとっての問いとは何か。一杯あります。一つは「介護ケアとは何か」です。教育に携わる者としては、「教育とは何か」ですが、このままでは問いが大きすぎます。この問いをもっと具体化できるかどうか。その他にも、「人間の尊厳と自立とは何か」「科学的とはどういうことか」「共感とは何か」等々。問いはつきません。これらの問いは、現場の現実と自分の思い・理想との軋轢の中で浮かび上がってきたと思います。

f:id:miyauchi135:20210209140655j:plain

       2020年2月17日撮影。今年は初めて梅まつり開催が延期。

h-miya@concerto.plala.or.jp