介護保険制度は5年ごとに見直されています。①2005年の改正は「予防重視システムへの転換」と「施設給付の見直し」でした。この時点までの認定区分は要支援・要介護1から5までの6段階でしたが、要支援は要支援1になり、要介護1は要支援2と要介護1に分けられ、全部で7段階になりました。そして、要支援者への給付は「予防給付」になり、要支援者のケアマネジメントは、「地域包括支援センター」が行うことになりました。
もう一つが施設給付の見直しです。この時までの介護保険施設の食費・居住費は保険給付の対象でした。多床室がメインの時代です。特別養護老人ホームで安く暮らせる状況は居宅利用者と比べて不公平、との声が大きくなって、食費・居住費は給付対象外(全額自己負担)になりました。
②2011年の介護保険 法の改正の目玉は、「地域包括ケアシステム」の構築でした。高齢者が住み慣れた地域で、安心して最期まで暮らせるように医療・介護・予防・住まい・生活支援サービスを切れ目なく提供する、というシステムの実現です。地域包括ケアシステムは、おおむね30分以内に必要なサービスが提供される日常生活圏域(具体的には中学校区)を単位として想定されています。地域の生活を地域で支えるという考え方です。
この改正では、医療と介護の連携の強化が大きな柱の一つになっています。ここで複合型サービス(看護小規模多機能型居宅介護)が創設されました。施設への「通所」(デイサービス)と短期間の「宿泊」、自宅への「訪問介護」、看護師などによる「訪問看護」が組み合わされて、介護と看護が一体的なサービスとして受けられるシステムです。料金は1カ月の定額制なので、デイサービスの毎日の利用も可能です。
もう一つが介護人材の確保とサービスの質の向上です。介護保険制度によってサービスの提供者に、市町村や社会福祉協議会などの公的な団体中心から、民間企業や農協、生協、NPOなどの多様な事業者が参入しました。この当時、「介護」はブラック企業の代名詞だったようです。休みが取れず過労でうつを発症する職員も多く、退職者も続出していました。現在でも職員が足りなくて過労になる傾向が多く、離職者が多い職場ですが、介護サービス事業所において事業所指定の欠格要件と取り消し要件に労働基準法違反者が追加されました。
また2009年から始まった政府による介護職員の処遇改善交付金は事業者に交付されていましたが、2012年から「介護職員処遇改善加算」がスタートして、介護報酬に組み込まれました。
③2014年の改正では、一定以上の所得のある利用者の自己負担が2割に引き上げられました。また施設から在宅への流れの中、特別養護老人ホームは「要介護3以上」が入所要件になりました。さて、先に触れたように、2005年の改正で特養の居住費と食費が介護保険の給付対象から外れました。その分、前年度の所得によりそれらの費用の軽減措置が取られていました。しかし高齢者には、所得は少なくとも資産のある人が多いということから、低所得の施設利用者の食費・居住費を補填する補足給付の要件に、資産などが追加されました。預貯金が単身1000万円以上、夫婦で2000万円を超える場合は対象外になりました。
予防給付(介護予防訪問介護・介護予防通所介護)が総合事業に移行しました。総合事業とは、要支援以下に認定された人を対象として「市区町村が中心となり、その地域ならではの介護予防サービスを充実させ、地域の中で支え合う体制を作る」ことを目指しています。問題は財源です。介護保険制度内の事業ですが、介護給付とは異なって、市区町村への給付上限額が設定されています。オーバーすると市区町村の持ち出しになります。
④2017年改正では、サービス利用料の3割負担が導入され、2018年8月から実施されました。また、新たな介護保険施設として「介護医療院」の創設があげられます。これは日常的な医学管理や看取り、ターミナルケアなどに対応できる機能と、生活施設の機能を併せ持っています。介護保険上では「介護保険施設」ですが、医療法上は「医療提供施設」です。少し前に、ターミナルケア に対応している施設の介護士募集を見たことがあります。かなりきつそうと思った覚えがあります。
2000年に介護サービスが始まった時の利用者は149万人でした。それが2015年には512万人になりました。2012年9兆円だった費用は、2025年には20兆円程度にまで増える予測がされています。介護保険法は今後も改正されますが、超高齢社会の到来は、財源不足と人手不足への対応を迫っています。介護サービスの在り方も問い直されているのではないでしょうか。