宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

サチュレーション

 先日の勤務時、入居者さんの体調が気になる状態でした。もともと在宅酸素療法の適用者で、移動時には携帯用の酸素ボンベを使っています。年齢的にも心配な方です。サチュレーションが90%という状態が、ここのところ続いていたようですが、先日は、朝、さらに下がっていて、訪問診療でドクターが往診に来ました。

 バイタルサインとかサチュレーションという言葉は、普通の生活ではあまり聞きません。病院や高齢者施設では、普通に使われます。高齢者デイ・サービスでは、まず体温と血圧・脈拍の測定から始めます。バイタルサイン(生命徴候)にはいくつかあります。心臓が動いている、血圧が一定値以上に保たれている、息をしている、体温を維持している、排尿・排便をしている、等々。バイタルサインの測定には、通常、脈拍、呼吸、血圧、体温などが対象になり、数値化します。

 経皮的動脈血酸素飽和度(SpO₂)の測定値を含めることもあります。サチュレーション(saturation)というのは飽和度のことですが、医療的な意味では酸素飽和度(SO₂)のことです。現在は、パルスオキシオメーターで測定する経皮的(percutaneous)動脈血酸素飽和度SpO₂の値を言います。酸素飽和度の測定方法にはもう一つ、血液を採血して測定する方法があります。これは動脈血酸素飽和度SaO₂と言われますが、両方の値はほぼ同じになるそうです。

 バイタルサインのチェックを習慣的にやっていますが、その意味をどこまで分かってやっているか、と言われると疑問です。でも、血圧に関してその人の通常の収縮期と拡張期の血圧が分かれば、それから大きく変動していると気を付ける必要があります。単に上が130mmHg以下だからとか下が85mmHg以下だから問題ない、ということではありません。体温に関しては、平熱かどうかは健康かどうかに直接かかわるサインで分かり易い。

 サチュレーション(酸素飽和度)は在宅酸素療法の適用者の場合、基本的に毎日測ります。以前勤務していたデイ・サービスでは、ある時点から、週一の割合で、利用者全員測るようになりました。

 現在、酸素飽和度は、パルスオキシオメーターで簡単に測れます。本来は動脈血を採血して、ガス分析装置にかける必要がありますが、手指の爪に挟んで光センサーで測定します。血液中のヘモグラビンがどの程度酸素と結びついているかを、ヘモグラビンの持つ特性から割り出します。

 血液の半分は血漿と言われる薄い黄色の液体で、赤く見えるのは赤血球の色です。赤血球は血球という細胞成分の一つで、酸素を取り込み二酸化炭素の排出をします。この赤血球の中のタンパク質であるヘモグラビンが、酸素を取り込む働きをしています。酸素とヘモグラビンが結び付くことで血液の赤色はより鮮やかになります。パルスオキシオメーターは、光センサーを指先につけて、光の透過する割合から、ヘモグロビンと酸素の結合している割合を出します。ヘモグロビンは酸素と結合していると赤色をあまり吸収しませんが、結合していないと赤色を吸収します。96%~99%が正常値です。

 通常の生活ではあまり測らないし、意識もしていませんが、高齢者施設では結構頻繁に測定します。100%も正常値ですが、過呼吸状態の時測定すると、100%です。浅く早い呼吸を必要以上に繰り返すと、酸素が体内に増えすぎて二酸化炭素とのバランスを崩して起こる症状です。過呼吸による発作に襲われると、胸が苦しく、呼吸がしづらいことから、本人は酸素が足りないと思いますが、不足しているのは二酸化炭素です。以前はよく袋を口に当てて「ペーパーバック法」を行いましたが、「低酸素で死亡したケースがあり」、現在は少なくとも素人がやっては危ないと言われています。応急処置は浅い呼吸をゆっくり行い、1、2秒息を止めてから、ゆっくり10秒かけて吐く。強い発作でも、1時間くらいで収まると言われています。

 介護の現場にいると、知らないことが沢山あることに、日々気づかされます。生きていること、生命現象の複雑さ。食べて、寝て、排泄して、というごく当たり前のことが、こんなに大変なことかなのかと、愕然とすることもあります。取りあえず、今日はここまでにします。

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     昨年の那珂湊支所展示室企画展「楽しいひな祭り」(2019年2月19日撮影)

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