宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

社会福祉と法律

 先日、ある社会福祉法人の方にお会いしました。現在、肩を痛め、介護士の仕事は小休止。福祉の現場で他に何ができるか、考えています。

 介護士として働いてみて思ったことは、かつて介護福祉士養成学校で教えていた「人間の尊厳と自立」の授業構成、今ならもっと違った形でやるなぁ、ということ。まぁ、当たり前ですが。

 養成学校が立ち上げられたばかりの頃(1997年)は、科目自体、厚労省(この頃は厚生省)からの指定にも詳細がなく、倫理学という授業でした。むしろこちらの方が人間の生き方と向き合う授業になっていたかもしれません。

 「人間の尊厳と自立」のテキスト(『人間の理解』中央法規)はよくできていると思います。ただ、それは知識的な側面であって、確かに経験した人や部外者でも関心のある人が読めば参考になります。しかし高卒段階で、まだ福祉の現場を知らない学生にとっては、知識の羅列です。介護福祉士の国家試験対策としては使えますが。

 福祉三法、福祉六法、福祉八法なるものを知ったのは、この授業の準備を通してでした。第二次世界大戦敗戦後、まず児童福祉法(1947年)が成立し、身体障害者福祉法(1949年)、生活保護法(1950年)と整備されました。ここまでが福祉三法と言われます。これらはすべて昭和20年代です。戦争孤児や疾病兵の救済は急務であり、かつ生活保護の整備も近代社会の福祉の根底になります。

 この生活保護法は、1946年に公布されたものが1950年に全面改訂され、公布と同時に施行されています。戦前の生活困窮者救済法は、1929年(昭和4)に公布・1932年(昭和7)施行の救護法です。イギリスの救貧法(1531年に始まる)を参考にしています。救護法は1946年に生活保護法の施行によって廃止されました。生活保護法では現金給付と現物給付がありますが、医療と介護は現物給付、つまり、料金を払わないでサービス等を受けられます。

 その後、高度経済成長期に、知的障害者福祉法(旧:精神薄弱者福祉法 1960年)、老人福祉法(1963年)、母子及び寡婦福祉法(旧:母子福祉法 1964年)が加わって福祉六法体制になりました。

 1980年代に入ると戦後の社会福祉体制の見直しが始まり、1990年(平成2)に社会福祉関係八法が改正されました。ここには生活保護法は入っていません。生活保護法を除く五つの法律に、老人保健法(1982年)、社会福祉医療事業団法(1984年)、社会福祉事業法(1951年)(現:社会福祉法 2000年)が加わって、福祉八法と言われます。

 なぜ生活保護法が含まれないのか。生活保護法には他法他施策優先の法則があると言われますが、これが関係しているのでしょうかね。社会保障制度の基本法は沢山あります。授業の準備を通して学んだことですが、福祉を形作る枠の力です。私たちの日常生活もたくさんの法律に形作られていますが、通常あまり意識しません。日本の福祉の世界は法律がもっと近い感じがします。日本の福祉は、法律から始まっている感じでしょうか。

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                  1月13日の平磯海岸

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