宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

力を引き出す指導

 大坂なおみ選手の快挙に、大阪だけでなく日本のマスコミが飛びついています。日本人の母とハイチ出身の米国人の父を持つ大坂選手は、3歳からアメリカに居を移して練習を重ね、20歳でテニス全米オープンで優勝しました。彼女は「二つの国籍を持つあなたのアイデンティティはどこにあるか」と聞かれて、「私は私です」と答えていました。彼女の試合後のインタヴューへの自然体の応答にも称賛が集まっています。

 私はテニスにというよりスポーツにあまり関心がなく、知らなかったのですが、大坂選手は繊細な精神をコントロールできずに、プレッシャーに負けてコート上で泣き出すこともあったそうです。そんな彼女を成長させたコーチが、ドイツ人のサーシャ・バインさん。彼は選手の心に寄り添うタイプのコーチだそうです。日本のスポーツ界のパワハラや暴力を伴う指導が問題になっているだけに、林竹二さんがかつて書いていた言葉を思い出しました。

 『学校に教育をとりもどすために 尼工でおこったこと』(筑摩書房)の序章の部分で林さんは、教師(ペダゴーグ)とは古代ギリシアで子どもたちの学校への送り迎えをした奴隷の「パイダゴーゴス」から出ている、と言っています。付き添うことこそが、教育の原点なのだと言っている。そして林さんが言い続けていたことは、付き添い続けてながら、魂の世話をすること。この魂の世話をする場が、授業だということです。

 指導者に求められているものは何なのか。改めて考えなければならないと思います。

h-miya@concerto.plala.or.jp