宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』

 2014年12月3日にフランスで初上映された映画です。実話をもとに作られています。貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校で、教えるのが大好きだと言う歴史教師のアンヌ・ゲゲンが担任するクラスは、問題児たちが集まるクラスでした。彼女は、「アウシュビッツ」をテーマにした歴史コンクールに参加するよう生徒たちに提案します。最初、そんな難しいこと自分たちにはできない、私たちに恥をかかせたいんでしょうと反抗していた生徒たちですが、ゲゲン先生の熱意に動かされて、作業を始めて行きます。

 彼らが大きく変わるきっかけになったのは、アウシュビッツの証言者レオン・ジゲルさんの話を聞いたことでした。ジゲルさんはご本人です。彼の出演場面には台本はありません。彼自身の言葉で綴られていて、「私は神を信じません。人間を信じます。ここにいる皆さんを信じます」と語っていた場面が印象に残りました。

 なぜゲゲン先生が、生徒たちに「アウシュビッツ」をテーマにした歴史コンクールに参加することを奨めたのかが、今一つ分かりませんでした。ヨーロッパの現代史において、アウシュビッツは伝えていかなければならないものなのだと言うことは、よく分かります。『フリーダム・ライターズ』でもアウシュビッツを生徒たちが取り上げ、それによって生徒たちが変わっていく姿が描かれていました。これはアメリカ西海岸の高校での実話です。どちらも歴史の持つ力が、落ちこぼれて人生をあきらめかけている生徒たちの心に響くこと、学ぶことで見えてくるものに自分の人生を重ねて、生徒たちの心が揺さぶられることが伝わってくる映画でした。

 私たちは、第2次世界大戦とどう向き合えばいいのか。ドイツ人は「アウシュビッツ」とどう向き合っているのか。次は、『帰ってきたヒトラー』を見てみます。

h-miya@concerto.plala.or.jp