宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

『きっと、うまくいく』、『4分間のピアニスト』

 『きっと、うまくいく』DVDで漸く観ました。170分があっという間のインド映画でした。2009年公開当時、インド映画歴代興行収入1位を記録したコメディ映画だということは、聞いていました。大笑いする映画というイメージを裏切られ、もちろんコメディですが、洒落ていて、人生のいろんなことを伝えてくれる映画です。

 成績は学年1番のランチョーが友情のために卒業試験問題を盗み出したり、ルームメイトのファランに本当にやりたいことを父親に伝えるよう説得したり、と。そして最後は、友人たちが行方不明のランチョーのために、他の男と結婚しようとしている恋人を結婚式からを連れ出して、ハッピーエンド。後は見てのお楽しみ。でも、絶対見て損はしない映画です。

 『4分間のピアニスト』(2007年)は打って変わってドイツのシリアスドラマ。監督のクリス・クラウスが構想に8年をかけたというドラマです。ドイツアカデミー賞では8部門でノミネート。

 かつての天才ピアニストジェニーは今は獄中にいて、手負いの狼のような性格を示します。彼女の天才を見い出したのが、刑務所でピアノを教えるトラウデ・クリューガー。彼女は実在する人間だそうですが、クリューガーの過去を含め映画の内容は監督が8年かけて創作。やはり最後の4分間の演奏、そこにすべてが凝集されています。天才ピアニストジェニーを演じた女優は1200人のオーディションから選ばれ、ピアノは触ったことがなかったそうです。6か月の特訓で、最後の圧倒的な演奏シーンを撮るというのは、さすがです。ピアノの可能性というか、音楽の力(魔力)とそれを支える文化的背景を感じました。

 クラシック以外を認めないトラウデと自分の信じる演奏を貫くジェニー。刑務所の看守のジェニーへの嫉妬や同房者の敵意。それでもコンテストにジェニーを出すことを自分の使命と信じて、あらゆる手段を使うトラウデ。そして最後の4分間の演奏で、クラシックにジャズ含め現代音楽の手法を使って演奏するジェニー。やけ酒をあおったトラウデも、最後はそっと投げキッスをします。それを見て、お辞儀を拒否し続けて来たジェニーが、優雅に会場の喝采にお辞儀をします。それを待っていたかのように警官が手錠をはめるためにジェニーを取り囲む。

 どちらも天才はいる、という映画でしたが、テイストが違っています。天才というのは、人間の可能性、と言い換えてもいいのかもしれませんが。

h-miya@concerto.plala.or.jp