宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

老人福祉はこどもの問題、家族の問題

 これは稲葉峯雄さんが『石のぬくもり』の中で書いている言葉です。ガリラヤ荘のひな祭りに児童養護施設から4歳と2歳の幼児がやって来て、百歳近い老人と手を取りあって祝っている。こどもがいても事情があって一緒に暮らせない百歳近い老人と、親の顔を知らない幼児がふれ合っている光景を同時代の社会全体がまず知ってほしい、と。

 この頃多発していた在宅老人の事故死や老人ホームの不祥事に出会うたび、稲葉さんはこみ上げる怒りを感じると書いています。そしてコミュニティづくり、ボランティア活動が行政的なスローガンに終わって、地域住民の生活に根ざした人間の絆が生まれていない、本物の地域福祉がない、と。1982年3月3日の日記に書かれた状況は、今もそれほど変わっていないのではないでしょうか。また、自分たちの仲間のホームから起こっている福祉の心を裏切る不祥事。その根っこは、ホームが内外から閉鎖された社会であることに問題がある、と。

 稲葉さんの、自らの実践の場から発せられた地域福祉の在り方に対する怒りや疑問を、忘れてはいけないと思います。そして、関心を持つことの重要さも。

                                 宮内 ひさこ

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