宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

『ボヘミアン・ラプソディ』

 「春に3日の晴れなし」と言われますが、土曜日の小雨から昨日今日と晴れています。この晴れも明日の午後には崩れるようです。春は高気圧と低気圧が交互にやってくるので、お天気が変わりやすい。昼間の風は冷たさが減りましたが、夕方以降は冷えてきます。

 『ボヘミアン・ラプソディ』を漸く視聴しました。評判だけはずっと聞いていて、観たいと思いながら、そのままになっていました。フレディの生い立ちやクイーン結成話などに、なるほどと思いましたが、映画自体は、テーマが何なのか、分かりませんでした。まぁフレディの伝記映画ということですから、映画を観ていろいろ考えることがある、ということでいいのでしょう。でも音楽は素晴らしかった。1985年のライブエイド(LIVE AID)のステージは、この映画で忠実に再現されていましたが、圧巻でした。

 ライブエイドは、「一億人の飢餓を救う」というスローガンの下、1985年7月13日に行われたチャリティーコンサートです。メイン会場は、イギリスのロンドン郊外、ウェンブリー・スタジアムアメリカのフィラデルフィアJFKスタジアムです。ウェンブリーには来賓として、チャールズ皇太子とダイアナ妃(当時)が出席していました。

 ウェンブリーの収容人数は90000人、当日の観客数約72000人。クイーンの21分間のステージのフィナーレを飾る「We Are The Champion(伝説のチャンピオン)」では、聴衆が一体となって波打っていました。映画と1985年のステージ映像の並列画面を見ていても、主演のラミ・マレックが忠実にライブエイドのステージを再現しているのがよく分かります。

 今見ても鳥肌が立つようなステージです。あのライブエイドのステージで、クイーンは史上最高のバントの一つになったと言われますが、納得します。そして音楽の持つ力の凄さを見せつけるステージだったと思います。「RADIO GA GA」の熱唱の後に、フレディは聴衆に対し「エーオ」の即興コール&レスポンスを誘い、会場が一体になって盛り上がります。映画のラミ・マレックの演技は絶賛されていますが、私には実際のフレディ・マーキュリーの格好良さに比べて、ちょっとコミカルな感じがします。

 「ボヘミアン・ラプソディ」はロックとオペラを融合させた曲調で、歌をつなぎ合わせるとか、情熱的な文章というのが、ラプソディ(狂詩曲)のもともとの意味です。ボヘミアンというのは、自由奔放に生活する人たちのことです。ロックはもともとは反権力の音楽で、カウンターカルチャーのシンボルのようなものでした。これが、1970年代後半には産業音楽になったと批判されます。クイーンの結成はまさに1970年代で、メンバーはみな高学歴、フレディは圧倒的歌唱力を持ち、全員クラシック音楽の教養も持っている。ロックの代表的バンドとは言い難い面があります。しかし、あのライブエイドのステージ・パフォーマンスに、涙する人が多いのは事実です。

 フレディは1991年に、エイズで亡くなりましたが、1985年のライブエイド時点では、メンバーだけが彼の病気を聞かされていました。ライブエイドでのパフォーマンスへの感動は、純粋にその神憑り的パフォーマンスへの感動だと思います。感情を揺さぶるものは、社会的・理性的コントロールを逸脱する力を持っています。それが社会変革へのエネルギーを秘めているのは事実で、体制側が恐れるものでもあります。ところが産業主義に飲み込まれることで、牙を抜かれ、自滅していく。確かに批判の意味も分かります。

 モーツァルト人間性には、彼の生みだす音楽とは別で、結構下品なところがあったと言われます。音楽の持つ力には、理念とか、思想とか、人間性とは別のものがあるのではないでしょうか。

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 内容と全然関係ありませんが、2月19日の水戸駅南口、ペディトリアンデッキで見かけたミーアキャット

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