宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

新潟の高齢者支え合い活動

 新潟県で発行している『高齢者見守り・支え合い活動事例集』(新潟県福祉保健部高齢福祉保健課、2019年)を送って頂きました。2013年に事例集を作成し、今回は改訂版だそうです。新潟県の高齢化率が全国平均を上回っていることが、このような地域の住人同士の助け合いを推し進める原動力の一つになっているようです。

 新潟県のみならず、現代は、人口構成の変化や共同体の変質などで、地域で最期まで暮らすにはどうするかを、自覚的に自分たちで構築しなければならない時代だと思います。 

 新潟県では、「地域の茶の間」活動が盛んに行われていることを始めて知りました。「地域の茶の間」とは、子どもから高齢者まで、障害の有無や国籍などを問わず、誰でも参加することができ、それぞれが自分なりに時間を過ごせる居場所のことです。この「地域の茶の間」は、新潟市で制度外の有償助け合いサービスや居場所づくりを行っていた河田珪子さんが、平成9年(1997)に始めたことで誕生し、今や全国に広がっているそうです。
 高齢者にとって、「地域の茶の間」は関係性の回復に役立つと、その意義が語られていました。私たちは社会生活をする中で、自分より上(会社の上司など)、自分の横(同僚や隣近所、奥さんなど)、自分より下(子どもや部下)というような関係性を持っています。それが退職し、介護されるようになると、関係性が家族に限定され、かつ、奥さんや子どもが自分より上の存在のように感じるというのです。そこで「横と下の関係性を回復させよう」というフレーズが出てきます。地域の子どもたちをそばに連れて行ったり、自分の得意だったことを教える相手を作ることで、横と下の関係性を回復させることが出来る、というのです。これは成程なぁ、と納得しました。
 私も、高齢者と子どもは魂の構造が近いと思っていて、両方が一緒にいることで互いに刺激しあったり、助け合ったりできると考えていました。関係性の変化が持つ喪失感をどういう風に補ったらいいのか、という点から、地域の集まりの目的設定をすることは、支え合いシステムを作るときに重要だと思いました。
  「住み慣れたところで、少しだけ助けてもらえれば住み続けられる」、そういう思いはこれから日本中で課題になっていきます。ひたちなか市は、高齢者サロンは幾つかありますが、コミセン等を利用した活動です。空き家等が増えている現状で、寄りなせ「あいあい」(常設型地域の茶の間)のような活動は、参考になります。最初は月一回、地区の公共施設で開いていた「地域の茶の間」が、一軒家を借りて、ほぼ毎日茶の間を開くまでに発展しました。基本は、やろうとするメンバーが何人かで協力する体制を作れるかどうかなのだと思います。最初は、やはり月1回くらいの集まりから始めた方がいいと思いました。まずは、小さく始めること。
 地域共生型デイサービスよいさ、も面白い活動だと思いました。デイサービスでの過ごし方は、基本施設側がプログラムします。利用者さんにとっては、どうなのだろうと、今も考えています。レクのときは、自発的に動いてくださる利用者さんもいて、レクの重要性を認識しました。ただ、自立援助というなら、もっと根本的な自発性の喚起が必要だろうと思います。
 すべてのデイサービス、施設生活がこういう形で、というのは無理でしょうが、「自分の暮らし方は、自分で選ぶ」が基本になっていくことが望ましいです。そのとき、やはり「自分で」をどれだけ周りが引き出し、支援できるかなのだと思います。それが「当たり前」になっていくには、「よいさ」のような拠点が幾つかそれぞれの地域で活動実績を上げる必要があるのだと思います。
  気心が知れた関係だけで集まるのでは、「場」はこれからは維持できないと思います。誰でもが入ってこれることの問題性もあるのですが、かと言って知っているもの同士だけの関係性で、「場」は維持できるのか。この辺りは、これからの課題だと感じています。行政が、地域の「場」の形成に積極的に関わる意義も、この辺りに関わっているのかもしれません。

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