宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

オレンジカフェ

 2日土曜日の午後、結城市公民館で開催されたオレンジカフェにお邪魔してきました。これは認知症カフェのことですが、認知症のシンボルカラーがオレンジであることから来ていると言われています。認知症カフェは、2012年に発表された厚生労働省認知症施策推進5か年計画で定義された取り組みです。曰く「認知症の人と家族、地域住民、専門職などの誰もが参加でき、集う場」と。

 認知症カフェは、1997年、オランダのアルツハイマー協会と臨床老年心理学者ベレ・ミーセンが協力して始めたものと言われています。本場のアルツハイマーカフェには5つの特徴があります。

 1.自由で対等な人間関係、2.アルツハイマー協会の指導と助成、3.定型的で反復的なプログラム(30分刻み・5部構成のプログラム)、4.生演奏のBGM、5.平日・夜開催

 2日のオレンジカフェは、結城病院の作業療法士川口淳一さんが講師役でした。川口さんは参加者全員に簡単な自己紹介をしてもらった後、沖縄の三線(さんしん)やギターをつま弾きながら、日本全国をご当地ソングで旅をするというプログラムから始めました。歌の旅は東京から始まり西へ行って、突然北海道に飛び、「津軽海峡冬景色」で終わりました。「有楽町で会いましょう」、「北の宿から」、「瀬戸の花嫁」、「長崎は今日も雨だった」、「知床旅情」、「函館の人」などなど。

 歌っているうちに、隣同士が話を始めたりして、どんどん雰囲気が打ち解けていきました。途中で、色カルタ(微妙に異なる色合のもので、100色くらい在ります)をやりましたが、これは「お題」のイメージする色を各自が選んで、それを話すというものです。例えば、「秋」でそれぞれが色を選びます。濃い朱色や黄色、藤色を選んだ人に「その心」を話してもらいます。「紅葉」とか「コスモス」、「ブドウ」等々。紅葉でも黄系の人もいれば、赤系の人もいました。その他のお題は「好きな食べ物」、「故郷」など。皆さんの選んだ色が、とても柔らかな色合いが多かったのが印象的でした。

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 生演奏で歌うのは気持ちがいいし、楽しかったです。歌を歌おうというと、どうしてもカラオケになりがちですが、カラオケでは生演奏でみんなで歌う盛り上がりが出てきません。覚醒させる力が生演奏にはあるそうです。

 日本の認知症カフェは、4つの源流があると言われます。一つ目は「アルツハイマ-カフェ」で、これはオランダ式理念とプログラムを浸透させようとする試みです。まだまだ行き渡ってはいませんが、2018年8月に『認知症カフェ企画・運営マニュアル』という書籍が出版されるところまで漕ぎ着けました。2つ目は「家族会」系のもので、相談やサポートを基本とするもの。3つ目は「ミニデイサービス」系で、行政などが主体になって、レクリエーションや介護予防を行うものです。今回参加したカフェは、この分類に入るかなと思います。4つ目が「コミュニティカフェ」系で、シニアサロンとも呼ばれ、住民主体で行われています。ここでは支援される側も企画・立案に参加するなど、「通いの場」づくりを通して高齢者にとって、交流や活躍の場となっています。

 地域づくり、まちづくりの一環として「コミュニティカフェ」のようなものを作ろうという動きは、これからも進められていくと思います。私たちはやはり人と集うことで、覚醒するし安心します。アルツハイマーカフェの5つの理念は、そのとき参考になると思います。ただ、何のためのカフェなのかは、ある程度理念が構築されている必要があります。もちろん、運営の中でよりよい形を探り続ける必要はあり、それによって変化していくのは当然です。ただ、最初から何となく集まろうでは、続かないと思います。何のために集まりたいのか、住民主体でカフェを作ろうとするとき、情報が欲しいのか、楽しみたいのか、それとも何かコミュニティに貢献したいのか。様々な目的があると思いますが、「認知症カフェ」は喫緊の必要性をもつものであるとは思います。

h-miya@concerto.plala.or.jp