宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

『幸せへのキセキ』と『僕とシッポと神楽坂』:動物たちと共に

 2011年12月23日公開のアメリカの映画『幸せへのキセキ』(2012年6月8日日本公開)のDVDを借りてきて観ました。実話を基にした映画で、その話は「動物園を買った家族の奇跡」としてアンビリバボーで、2012年に放送されています。実在するイギリス南西部のダートムーア動物公園立て直しの話です。動物園の運営など、全くの素人だったコラムニストのベンジャミン・ミーは、閉鎖を余儀なくされ、このままでは200頭以上の動物が射殺されることになる動物園を、父親の遺産と自分の全財産を投資して買収しました。彼は、アフリカの動物を守るために自分には何もできなくても、ここの動物たちのためには何かできると思ったから、とネットで語っていました。

 『幸せのキセキ』では、場所がロサンゼルスに移り、最愛の妻を失ったことで抜け殻になった主人公(ベンジャミン)が、家族(特に息子)との関係を立て直そうとチャレンジすることになっています。実話では奥さんは開園3か月くらい前に亡くなっていて、それまでは一緒に開園に向けて力を貸してくれていました。子どもや兄弟たちも協力的だったそうです。それでも、開園までは資金問題なども含め大変だったようです。それはそうでしょうね。しかし、ともかくは採算を度外視しても走り出す熱意はすごいなあと思います。

 人間も動物ですが、野生動物と共に過ごすことで、何かが変わっていくというのは分かるような気がします。自然の前で、人間の事情や「甘え」は通用しない。映画の後半で、ベンジャミンが亡き妻を思い出すシーンが素敵でした。子どもたちと遊び戯れる妻の生き生きとした姿に、ベンジャミンは涙を流します。彼はもしかしたら初めてしみじみと泣いたのかな、と思わせるシーンです。心が固まって彼の中で時間が止まってしまっていたのが、静かに溶けていく。そんなシーンでした。

 最近気に入って観ているドラマ『僕とシッポと神楽坂』はペットの話ですが、おそらく神楽坂という場所が大きな意味を持っていると感じます。動物のほっこり感と神楽坂というかつて隆盛を誇った花街の路地の雰囲気が、懐かしさを醸し出しているのでしょう。原作はたらさわみちさんの漫画だそうです。こちらのドラマは、「甘え」を上手に活かしている感じです。甘ったれではなく、ゆとりを生む「甘え」にペットが一役買っている。ペットは特に一人暮らしの人に薦められたりしますが、ちゃんと世話をしてあげないといけない。それが生きがいになりもするのでしょう。

 人間の言葉を話さない動物たちと一緒にいると、相手の状態を注意深く読み取る力が必要になります。ちょっと言葉は悪いのですが、実用心理学で人の心を読む方法、なんてあります。でも、動物と向き合うとき、自分の利害のために相手を知るのでなく、純粋に相手を知る力が必要になります。この力は、結局は、自分がどういう状況にいるのかを「客観的」に読み取る力につながります。

 一見無駄に思えることの中に、私たちの生き方の中に何が必要なのか、そういうことに思いを馳せさせる仕掛けがある気がします。

h-miya@concerto.plala.or.jp