宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

『大統領の料理人』:美味しいもの万歳

 10月もあっという間に過ぎています。今日は台風の影響で、真夏日でした。明日は24度まで下がるようですが。10月といえば、収穫の秋。美味しいものが一杯。そういうわけでもないのですが、『大統領の料理人』(2012年公開)のDVDを借りてきて、観ました。ともかく、素朴な家庭料理として作られているプライベートランチの豪華なこと。まあ、大統領のランチなので豪華なのかもしれませんが、これが素朴な家庭料理かい、と思いながら「美味しそうだなぁ」と観ていました。

 これは実話に基づいた映画です。1988年から2年間、フランソワ・ミッテラン仏大統領に仕えたダニエル・デルプシュさんをモデルにしています。デルプシュさんは、フランス大統領官邸(エリゼ宮殿)の史上初の女性料理人です。彼女はプライベートランチを担当するように抜擢されました。美味しいものを、食べる人の好みを考えながら作る彼女は、妥協せずに食材を吟味し、助手の二コラと一緒に試作を重ね、大統領を満足させる料理を提供し続けます。

 エリゼ宮は、1718年にフランスの貴族のために建てられた宮殿で、その後、ルイ15世の愛妾ポンパドール夫人やナポレオンの皇后ジョセフィーヌらが住まいにしていたこともあります。大統領官邸としては、1873年から使用され、ここを住まいにする大統領は、エマニュエル・マクロンで23人目です。

 さて、映画に戻ると、大統領の健康管理や経費削減が進められて、彼女は自由に料理が作れなくなります。さらに、入った当初からの主厨房の男性シェフたちからの当たりの強さにも疲れ、2年で退職してしまいます。その後、南極のフランス観測基地で1年間料理人をしてお金を貯め、ニュージーランドでトリュフを育てる土地を手に入れます。これも全部実話だそうです。なんか、すごい行動力だなぁと、圧倒されました。でも、「料理は芸術よ」という彼女の言葉には同感しました。だからこそ至高のトリュフを育てたい、という思いで南極で働く。これも何となく納得。

 美味しいものの力、これはありです。話が飛びますが、高齢者の低栄養が問題になっています。利用者さんを見ていても、食が細い方がいますが、彼らも好きなものや美味しいものは全部召し上がります。見ている側も嬉しくなります。食の力はすごい。映画自体はそれほどストーリー性がなく、話もある種挫折の物語でもあったのですが、でも美味しいものの力を、作る側も食べる側ももらえると感じさせられ、とてもほのぼのと豊かな気持ちになりました。

h-miya@concerto.plala.or.jp