宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

『イングリッシュ・ペイシェント』

 1996年に公開されたアメリカの映画。翌年の第69回アカデミー賞で最多12部門にノミネートされ、作品賞を含む最多9部門で受賞しています。原作は1992年にブッカー賞を受賞したマイケル・オンダーチェの小説『イギリス人の患者』です。

 舞台は第2次大戦末期のイタリア。カナダ人看護師ハナは、重いやけどを負った、英語を話すが自分の名前は思い出せない男を、空襲で破壊された修道院で世話をしています。そこに元泥棒で、カナダ軍諜報部隊のカラヴァッジョがやってきます。彼は、自分の親指が切り落とされるきっかけになった写真を撮影した、ハンガリー貴族のラズロ・アルマシーを追っかけていました。やけどを負った英語を話す男は、カラヴァッジョからの問いかけに徐々に記憶を取り戻していきます。

 やけどを負った男は、リビアの砂漠を探検し、イギリス人のマドックスたちと地図を作成していました。そこにイギリス人のクリフトン夫妻が合流します。キャサリン・クリフトンとアルマシーは不倫関係に陥りますが、キャサリンが一方的に関係を断ち切ります。戦争が始まり、アルマシーが引き上げの準備をしていると、ジェフリー・クリフトンの飛行機が彼をめがけて突っ込んできました。ジェフリーは即死し、一緒に乗っていたキャサリンは重傷を負います。アルマシーは彼女を洞窟まで運び、助けを求めて英国占領下の町まで行きますが、名前からドイツ軍のスパイの嫌疑をかけられ、列車で移送されることになりました。列車から逃げ出したアルマシーは、ドイツ軍から探検地図と引き換えにガソリンを手に入れ、砂漠に戻りましたが、キャサリンは既に死んでいました。彼女の遺体を乗せて、マドックスが置いて行った飛行機で飛び立つアルマシーはドイツ軍に撃ち落とされました。一命をとりとめたアルマシーは、全身やけどでベドウィンに救われ、イタリアに送られてきました。

 地雷処理を行う英陸軍工作兵キップとハナの恋、ドイツ軍の降伏とキャサリンとの関係を語り終えたアルマシーの安楽死、カラヴァッジョのアルマシーへの復讐心の浄化。観終わって、ズーンと響くものがありました。愛の重さと言ったらいいのでしょうか。フロイトは、イド(エス)の世界を性的欲望であるリビドーの座として語っていますが、人間の根源的な欲望の力に振り回される人間模様を観ていると、「愛」というのは難物だなあと感じさせられました。

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