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宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

『ダウントン・アビー』の世界

 イギリスの貴族が楽しみに見ていたという『ダウントン・アビー』。確かに、格式ある生活とはどのようなものかを描き出しています。連続物の面白さは、その世界が自分にとっても馴染のものになって、スッとそこに入りこめることです。俳優陣にとってもその世界はもう一つの自分の人生になるようです。

 イギリスでは2010年から2015年にかけて放映され、6シーズンで終了しました。私は、ファーストシーズンの1作目を見て、面白いと思いました。シーズン2が始まる頃には、他のシリーズものに嵌っていて、あまり見ませんでした。昨日(23日)、シーズン2の最終話を見て、やはり面白いなあと思いました。ただ、シリーズ物は、基本、アメリカの警察ドラマ系のものを見ます。『ダウントン・アビー』のような群像劇は、疲れるのであまり見ません。

 でもたまに見ると、面白いなあと思います。第1次世界大戦前後のイギリス社会がよく分かるように描かれています。カントリー・ハウスでの生活がよく伝わってきます。カントリー・ハウスは、貴族やジェントリ層によって作られた大邸宅で、イングランドの田舎における社会単位の中心でした。1870年のイングランドの農業不振や第一次世界大戦を契機に凋落していきました。ダウントン・アビーもそういう時代の波の中で変容してゆく姿が、描かれています。

 カントリー・ハウスの成り立ちは、エリザベス1世と大きく関わっています。彼女が1558年に即位すると、中流階級の才能ある人物を積極的に登用しました。エリザベス1世は、夏場の避暑兼地方巡行に家臣の邸宅に滞在することを好んだそうです。家臣たちは彼女の寵を得ようと、邸宅を競って飾り立てました。これらの邸宅の役割は中世のマナー・ハウス(荘園における農業社会の中心)と変わらなかったそうですが、その建築様式や内部構造の変化のために、カントリー・ハウスと呼ばれるようになりました。

 その他にも、カントリー・ハウス内での主人家族と使用人の関係、カントリー・ハウスを舞台にしたドラマなど、調べてみるといろいろ分かりました。ジェーン・オースティンの『高慢と偏見』は好きな小説ですが、カントリー・ハウスものという認識はありませんでした。国が違って文化が異なるというのは、描かれている時代背景への前提的了解がこんなに異なるんだなあ、と思いました。

 他の国の人が日本の時代劇を見たり、時代物の小説を読んだりするとき、かなり「不思議の国・日本」なのでしょうね。そう言えば、アメリカ滞在中にテレビ放映されていた『水戸黄門』を見たとき、刀での切り合いの場面に違和感を持ちました。アメリカの生活の場から見たからでしょうか。日本の現代生活の中で見る分には、娯楽として見れるのですが。虚構の世界ですが、そこにはやはり一つの世界が作り出されているのだと思います。

h-miya@concerto.plala.or.jp