最終日に滑り込みで、見てきました。やはり圧倒されました。68面の襖絵すべて展示されていました。鑑真和上座像厨子のある松の間は、「揚州薫風」と題された26面の襖絵が描かれています。これは和上の故郷を描いた水墨画です。東山魁夷の水墨画は、始めて観ました。観ているうちに、それを描いている画伯の息づかいのようなものを感じて、身が引き締まりました。
宸殿の間の濤声16面、青の世界。本来あるべき場所に収まった映像も流されていて、やはり展示も素晴らしいですが、襖絵として収まっている様子は圧巻でした。いつか観れる機会があったらぜひ観てみたいです。
一人のモーツァルトの陰には100人のなりそこなったモーツァルトがいる、というようなことを以前読んだ記憶があります。なりそこなったモーツァルトはそれでも幸せなのかな、とふと思いました。なりそこなった100人の東山魁夷がいるからこそ、私たちはこの成果を目にすることが出来ている。でもなりそこなった東山魁夷は、やはり幸せなのかも。作品制作に集中できる時間を持てるということは、たとえそれで生活できなくても、意味のあることなのでしょうね。むしろ東山魁夷自身の道程の方が、キリキリと自分を追いこんでゆくような厳しいものなのだろうと感じました。
茨城県近代美術館 美術館の前からの風景