宮内寿子「おはなしのへや」

日々、思うこと。

『帰ってきたヒトラー』:政治における「カタチ」の意味

 日本でも6月17日から順次公開されるようです。原作は2012年にドイツで風刺小説として出版され、250万部を売り上げているとか。日本語訳も出ています。2015年に映画が公開されるや240万人を動員。原題 Er ist wieder da(彼が再びここにいる)は、ちょっとショッキングなタイトルです。しかし、ドイツでよくぞ出版され映画化されたなあ、と思います。

 アメリカの大統領選をめぐる一連のトランプ旋風。ヒトラーには人心を把握する力があったと言われますが、政治における「カタチ」の力を考えさせられます。内容がよければという思いを、あるいは内容にこそ意味があると、私たちは考えるのではないでしょうか。そのことにあからさまな反対は出てこないかもしれませんが、でも現実を動かしているものは、あるいは現実に私たちが応答しているものはまずは知覚対象である「カタチ」です。

 私たちの文化が大切にしてきた所作や俳句や和歌の制約(音数、季語、場面の設定等々)という形を整える訓練法が、現在の日本の政治ではどのくらい重視されているのか。どういう訴え方が人の耳に、人の目に届くのか。市民派と呼ばれる、あるいは自称する人たち程、私自身への反省も込めて、その点に無自覚ではないかと思います。

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